防振工事の基礎知識


防振工事/防音工事ための防振工事
スタジオ・シネコン・駐車場、マンション防音工事
防振工事基礎知識


駐車場・シネマコンプレックス(シネコン)・スタジオ・音楽ホール・コンサートホール・多目的ホールなどから、ダンススタジオ・トレーニングセンター・体育館・マンションのユニットバス・ニ重床の防振工事・浮き床工事にも適用


コーキングバックアップ材 ポリウレタンは、防振効果なし!


スタジオ・音楽ホール・シネコン・映画館など外部からの振動を除振する場合に、
床衝撃音を低減するためのゴム、ポリウレタン防振材・緩衝材を使用すると
問題がおきる場合が多々あります!

ゴム、ポリウレタン系の防振パッド・シート、フォーム材に組込まれているタイプの防振材は、床衝撃音を低減する緩衝材であり、外部の振動を除振するものではありません!
使用方法を間違えている大手ゼネコンさん・設計事務所さん注意してください!


●防振材の選定基準
防振材の種類は、防振ゴム、金属スプリング、エアーサスペンションなど様々ですが、録音スタジオ・ホール・シネマコンプレックス(シネコン)など防音工事に使用される防振材は、ほとんど防振ゴムです。防振ゴムにもいろいろな種類があります。一般には円筒型防振ゴムですが、最近では、リングマウント・ボールダンパーのような質の高い防振材が主流です。ゴム、ポリウレタン系の防振パッド・シート、フォーム材に組込まれているタイプは簡易防振材で、性能を追及する防振・防音工事には不向きです。また、緩衝材と防振材を間違えて使用しないよう注意が必要です。よくホームセンターなどで売っているいろいろな色が付いたポリウレタンは、防振材ではなく緩衝材ですので注意してください。




1. 固有振動数(f0)が10Hz程度に設定できるもの
通常、防振したい周波数の1/3の周波数に固有振動数(f0)を設定します。10Hzに設定すると、30Hzぐらいから防振性能が発揮されます。
ゴム、ポリウレタン系の防振パッド・シート、フォーム材に組込まれているタイプでは、10Hz程度に設定できません。また、この種の防振材は、コンクリートを直に打設すると下記図のように防振材が設計どおり撓まず性能が悪くなります。このカタログに表示されている防振性能は、実験室で、コンクリート平板を上から載せて測定しているため現場と異なります。



*INCマット・ミラブロックのように、後から機械の支柱が設置され、集中荷重を受けるために、防振ゴムを埋め込んでおく、タイプは、問題ありません。


また、このような防振材は、柔らかい防水層の上に直接敷いた場合、緩衝材のフォーム材に荷重負担が多くなり、この部分が防水層にくい込んでしまい、防振材の正規の撓みがとれません。したがって、防水層の下部分にも耐水ボードを敷かなければ性能低下となってしまいます。直接防水層の上に敷けるとカタログ等に書いてありますが、誤りですのでご注意ください。





2. 減衰特性が良いもの。
金属スプリング・一部のポリウレタン系防振材は、内部摩擦抵抗が少なく、共振点の増幅が大きく、なかなか減衰してくれず暴露時間が長くなります。また、バネ自体の縦振動による共鳴現象(サージング現象)を起こすため可聴域の防振効果が悪くなり使用できません。防振ゴムは、内部摩擦抵抗が適度であるためこのような現象が起こりません。



ロゴマークに注意!!



3. 共振周波数の増幅レベルが低いもの。
f0では、振動レベルは増幅されます。このレベルが高い金属スプリング・一部のポリウレタン系防振材は、建築の防振材としては不向きです。通常の防振ゴムでは10~15dBですが、これらは15~25dBと非常に大きくなります。この周波数付近でのレベルが増幅し、外部からの低い周波数の振動に弱く、上部での人の動きの揺れに問題が生じることもあります。また、この様な防振材で、床衝撃音対策をすると、L値は良く出るが、壁、天井などが共振し異音を発生しクレームになることもあり注意が必要です。しかし、金属スプリングでは、防振ゴムよりf0を低くできる利点があるため、防振ゴムと組み合わせることで、この問題を解決した防振材もあります。


下階の天井・間仕切壁が共振し、異音発生の原因に!!
そして、現場の測定では性能低下


4. 防振の基本は「重心」
機械の防振架台の基本は、重心です。架台の上に設置する機械の重量が片側だけに偏心しては、良い防振性能は得られません。建築でも、床を浮構造にしないで、壁だけ浮構造にする場合など良く壁の下に、防振材を入れる場合があります。鉄骨下地に防振材を入れ、ボードなどを貼る場合は、両側から同じ荷重になるよう注意が必要です。片側だけにボード貼った場合は、貼った側は、圧縮、貼っていない側は、引張り方向に防振材に荷重がかかり防振効果が得られません。したがって、良い防音効果もえられません。




5. 衝撃を吸収する材料は、緩衝材であり、防振材ではない
床衝撃音性能が良い材料は、防振性能が良いとは言えない
幼稚園の床に使用しているポリウレタン材や、カーペットは、床衝撃音を吸収する緩衝材で、防振材ではありません。こんな材料を録音スタジオ・音楽ホール・劇場・映画館などの防振材に使用しても、その室内の床衝撃音を吸収できるだけで、外部からの振動・固体伝搬音を低減できません。床衝撃音L評価は、防振+衝撃吸収の性能です。外部からの振動対策に、床衝撃音の効果がある幼稚園で使用しているポリウレタン材や、カーペットを敷いても意味が無いように、床衝撃音性能が良い材料が、防振性能が良いとは言えないのです。



●防音室の防振工事の重要性
特にマンションにおける防音室の場合、隣室で他人が寝ていたり、最近では、サッシの防音性能が向上し外部騒音が小さくなり、室内暗騒音が低くなっているのが現状です。固体伝搬音は、レベルが低くても、明瞭度が良く聞こえたり、和室で寝室の場合は床に耳が近くなり、問題となる場合もあります。したがって、防振性能、良い防振材の選定が重要なのです。音楽ホール、シネコンなどでは、隣室が店舗や事務所で比較的騒音がある場所であるため、問題にならないところが多いため、マンションのピアノ防音室のほうが、防振性能・防振材の選定には、高い技術が必要なのです。また、マンションでは、隣戸にどのような人が住むかわかりません、騒音値がいくら低くてもハッキリとピアノなどの音が聞こえると問題が発生することもあります、したがって、防音工事において防振工事は重要なのです。また、ピアノ防音工事だけでなく、マンション・ホテルなどの機械室、駐車場などの防音・防振対策工事も同様です。このように人が住む住宅空間こそ、技術・信頼ある防音工事業者を選択しなければいけないのです。


なぜ防音工事に、防振工事が必要なのか?
1. ピアノなど楽器の足から伝搬する固体伝搬音を低減させるため。
2. 一度室内に出た音が、壁・床・天井に入射し、固体伝搬音として隣室へ伝わるエネルギーを低減するため。
3. 質量則以上の遮音量を得るため、部材間の振動伝達を抑えることにより防音性能を向上させるため。


以上3点のために、防音工事を行うには、防振工事が必要なのです。




●遮音性能を向上させるための、防振工事
単一部材の遮音性能は、入射音の周波数と材料の面密度の対数に比例します。(質量則)つまり、材料の重量が増えると遮音性能があがります。しかし、質量則では、重量を2倍(同一材なら厚みを2倍)にしても6dBしか遮音量は増加しません。
 この質量則以上の遮音量を得るには、部材間に空気層をとった二重壁を構成することにより可能となります。また、この部材間の振動伝達を抑えることによりさらに防音性能が向上します。したがって、マンションのピアノ防音のような高度な防音性能が必要な場合は、防振設計が必要不可欠となります。また、音は空気を伝播してくるもの(空気伝播音)と壁・床・天井などの物体内を伝播するもの(固体伝播音)があります。固体伝播音は、その物体が振動することで音が伝播するので壁などを厚くするだけでなく防振構造(浮遮音層)が必要となります。特にマンションで工事する場合は、床に伝播する振動に対して、防振構造が必要不可欠となります。
 苦情の発生しているピアノ室では防振構造が無い、または十分でないことが非常に多いため注意が必要です。





●コーキングバックアップ材 ポリウレタンは、防振効果なし
扉、窓など防振部分と被防振部分のエキスパンパンションジョイントに、白い円柱状のポリウレタン材を使用しているところがありますが、このポリウレタンは、防振効果がありません。特に狭い隙間に押し込んで潰されるとここから振動が伝搬します。また、その上にポリウレタン系などのコーキング材も、幅が狭くなると駄目、最低でも10mm以上にして、バックアップ材は、ポリウレタンではなくグラスウール24Kを柔らかく入れて、コーキングは薄めに打ってください。